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ホテルマンとして働く私たちの頭の中を、ちょっとだけお見せしちゃいます。
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色黒兄弟のひとり(おそらく弟)は瞳孔を見開き、震えていた。

私は肩で息をしながら、彼を揺すぶった。

「なんなんだ!お前らは!」私の怒鳴り声に、彼は完全に縮みあがっていた。「一体どうなってんだ!」

「へふっ、いひっ、くはっ、ふぉっ、ふぉっ、ふあっ」何かしゃべろうとしているが、怯えて言葉が出てこないようだ、彼は意味のない言葉を発し続ける。「ふぇっ、ふぐぁっ、ひぼっ、ひぼぼぼぼぼ」

「なにがひぼぼぼぼだ、この野郎!」私はさらに声を荒げ、唾を彼の顔に飛び散らせた。怒りにまかせ、襟元をつかんで前後に激しく揺さぶった。彼は目を白黒させ、リモコンと服がこすれる音がガリガリと響く。

しばらく続けたが、色黒(弟)は無言のまま口の端からぴゅーぴゅーと喘息のような息を吐き出し、私も疲れて手を離した。彼は地面にぐったりと横たわり、私を見上げたまま身動きもしなくなった。ぴゅーぴゅーと息が聞こえるだけだ。

ああ、と嘆息して空を見上げる。疲れていた。朝っぱらからリモコンだらけの世界に放り込まれ、不可解な出来事にいくつも遭遇したかと思えば、また最初からリピート、そして新たな展開。訳が分からない。作者にも訳が分からない。これからどういう展開になっていくのか、正直言ってまとまっていないので、随分と支離滅裂な方向へ行きそうな予感。なんてこった、こんな作者の茶番劇に俺は付き合わなければいけないのか?作中人物としての苦悩。思わず「とほほ」と嘆きたくなる。いつの間にか決まっていた「栗田」という名前、クリオコートだから最初は「栗尾」にしようとして、あまりにもそのままだったから「栗田」に変えたという安易なネーミング。訳の分からない世界を描こうとして、本当に訳が分からなくなって、これから俺をどう扱っていけばいいのか考えあぐねている作者のマヌケ面が容易に想像できる。それにしても色黒兄弟ってのはなんなんだ?練ってないから設定も雑じゃないか。ええ、作者さんよ、リモコンをこれからどうするつもりだい?ええ?ええ?

はあ、と大きくため息をつき、ふと気づけば、色黒(弟)がいなくなっていた。

「ああっ、逃げられた!」

(つづく)

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リモコンを中心として動きを止める私と二人。

しばしの沈黙。







「えいっ」静寂を破り、色黒兄弟の一人がこちらに向かってリモコンを蹴飛ばした。リモコンはきれいな弧を描いて私の部屋にゴールイン。

「あっ」私が声を上げたと同時に、二人は一目散に逃げ出した。私は部屋とふたりの後ろ姿を交互に見て、ワンテンポ遅れて追いかけた。「待てこらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

二人はすでにエレベーター前に達していたが(リモコンの上という走りにくい状況にも関わらず驚異のスピードだ!)、上の方に上がってしまっていて間に合わないと見切りを付けたのか、少し先の非常階段へとダッシュした。リモコンをざくざくと蹴散らしながら負けじと追いかける。非常階段の入り口にたどり着いた時に二人はもう階下へ見えなくなっていた。舌打ちしながら、階段を下るというよりもリモコンの上を滑る様に下に向かう。少し先で同じく下って行く音が聞こえている。徐々にではあるがその音が近くなってきた。
上から下へと滝のようにリモコンが流れていく。その流れに乗って階段を下りてゆく。もうすぐ二階から一階へと移る踊り場付近で、先から「がちゃん」と扉を開ける音がした。非常階段から外へ出る扉だ。逃がしてなるものか、と猛突進する。開かれた扉が見え、飛び上がる様に外に出た。

二人は駐車場から今にも道路へ出るところだった。飛び跳ねる要領で私は追う。色黒兄弟のひとりが振り返り、私の姿を確認すると小さく「ひぃっ」と悲鳴を上げ速度を上げた。よほど鬼のような形相をしていたに違いない。私の中には二人を絶対に捕らえるという使命にも似た感情が湧き上がっていた。もうひとりも振り返り、同じく「ひぃっ」と声を出し、驚きのあまりつまずいてその場へ転んだ。先を行っていた一人が「あっ」と立ち止まりかけたが、獲物を狙う獣のような私を見て、そいつを見捨てて逃げた。こけた一人も必死に立ち上がろうとしたが足がもつれ、二度三度と同じ場所で転んだ。

その上に飛びつくように襲いかかった。

荒い息を吐きながら耳元でささやいた「捕まえたずぉぉぉ・・・・」

(つづく)

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色黒の兄弟二人は満面の笑みを浮かべてこちらを覗きこんでいる。見れば、今は作業着ではなく、宅配業者の格好をしている。

「栗田さんかなー」「なー」

相変わらずのテンポで二人は尋ねる。

「あ・・・ええ、そうですけど・・・」

「お届け物だわー」「わー」

「あ・・・はぁ・・・」

二人はひとつの小さな段ボール箱を両側から支えながらうやうやしく差し出す。伝票といったものは何も貼っておらず、ただマジックで「栗田へ」と大きく書かれているだけだ。

「あの・・・伝票とかはないんですか」

「そんなもんは特にねぇべなー」「なー」

「これじゃあ、誰からかも分からないし、中身も分からないんで・・・・」

「そんなもんうちらは知らんがな。うちらの仕事はただ荷物を届けるだけだ」「んだ」

「でも何かも分からないのに受け取れないでしょ」

「うるしゃーなー。さっさと受け取れぃ」「えい」

二人は箱を押しつける様に突き出してきた。慌ててこちらも押し返す。二人は逆上して顔を真っ赤にし、さらにぐいぐい押しつけてきた。何が何でも受け取るまいと突っ放し、いつのまにやら互いに箱を投げつけあっていた。

「俺はこんなもんいらん!」

「知らん!受け取らんか!」「かー!」

箱は衝撃でかなりボコボコになっていた。それでも構わず向こうが投げつけてきたので思いっきり投げ返すと、ひとりの肘に当たり箱に穴があいた。

中から、シルバーで厚めのリモコンが転がり落ちた。

(つづく)

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電話はやはりタカシからだった。

「おーい、元気かー」「なんだよ」「不機嫌だな」「起きたらリモコンだらけで」「おーい、元気か―」「なんだよ」「不機嫌だな」「なんだよ」「不機嫌だな」「おーい、元気か―」「起きたらリモコンだらけで」「なんだよ」「元気」「不機嫌」「リモコン」「だよ」「おーい」「おーい」

突然電話が切れた。なんだったんだ今の電話は。繰り返しが細かくなってしまっている。おかしいと思っているのに止められない。自分の意志とは関係なく事態が進行している感じだ。最初に感じた“何かに操作されている”感じがまた強くなった。しかし、それをおくびにも出さず、頭の中で「さて次は」と考えている自分がいる。

さて次はテレビがつくのか。はい、つきました。

「全国のお天気でーす。田中さーん」「はい、今日は晴れるところあれば曇るところあり、雨降るところあり。天気は分からぬことばかり。天気予報の意味なし。辞めー、もう辞め―!」天気予報士が画面に突進し暗転。

なんだなんだ、繰り返し方が雑だぞ。困惑のための困惑による困惑。さあさあさあ次は部屋を出て廊下いっぱいにリモコン大海原でうぎゃーと驚く場面か。あれっ、場面とか考えている私、これは何かの舞台なのか?

疑問を解決する間もなく私の体は場面進行の為に動き始める。リモコンを踏みながらドアに寄り開けようとするがなかなか開かない。力をこめて開ければリモコンの大海原でうぎゃーと驚く場面か。あれっ、場面とか考えている私、これは何かの舞台なのか?

疑問を解決する間もなく私の体は場面進行の為に動き始める。リモコンを踏みながらドアに寄り開けようとするがなかなか開かない。力をこめて開ければリモコンの大海原でうぎゃーと驚く場面か。あれっ、場面とか考えている私、これは何かの舞台なのか?

疑問を解決する間もなく私の体は場面進行の為に動き始める。リモコンを踏みながらドアに寄り開けようとするがなかなか開かない。力をこめて開ければ訛りのひどい兄弟が立っていてこちらを見ていてうぎゃーと驚く場面か。あれっ、場面とか考えている私、これは何かの舞台なのか?

あれっ、新展開か?

(つづく)

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目が覚めた。

見慣れた天井。

昨日の酒が残った体。

手を動かすと何かに当たる感触。

覚えのあるシチュエーション。

ん、もしかして・・・?

顔を動かして見ると、案の定床一面に広がるリモコンの海。

起き上がり、ぐるりと辺りを見回す。

白黒灰色のモノトーンの視界。

突然床から響く音。

リモコンをどかせば音の正体は携帯電話。

また同じ場面の繰り返しているのか?

ただ、私の記憶はリセットはされていない。目が覚めてリモコンに埋もれた異常な日常を目の当たりにし、戸惑いながら外へ出て管理人のおばさんと遭遇、おばさんは逆に自分の事を奇異の目で見て、道路で出会った兄弟と思われるゴミ収集作業員の男二人は、とてもしゃべりに訛りがある。全て覚えている。その通りならば、この電話の相手は昨日一緒に飲んだタカシだ。

私は状況に困惑しているようにおどおどしながら携帯を手にする。

変だぞ。この困惑は、同じ事が繰り返されることへの困惑というよりも、これから何が起こるか知っていながら何も知らない振りをして、決められた筋の上をなぞっていく自分への戸惑いを多分に含んでいる。困惑することに困惑しながら困惑しているような困惑だ。ややこしい。非常にややこしい。

複雑な思いを抱きながら、私は電話に出た。「もしもし?」

(つづく)

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