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ホテルマンとして働く私たちの頭の中を、ちょっとだけお見せしちゃいます。
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「聞きたいことってなんべなー!」「なー!」あまりにも特徴のあり過ぎる二人の訛った掛け合いに、こんな場面にも関わらず思わず笑ってしまう。

「なんだー、人の顔見て笑ってー!なー!」「なー!」二人は怒ったようだ。しかし、色黒の顔に入ったシワの位置まで同じで、本当に瓜二つの男二人を見ていると、なんだか笑いが止まらなくなってきた。「あははははははは」と声に出して笑い、力が入らずにその場にへたり込んでしまった。痛い、腹筋が痛い。ゴミ収集車の兄弟は上からぽかんと私を見つめている。何事かと管理人のおばさんもホウキを片手に顔をのぞかせる。道の向こうからリモコンをザクザクと踏みしめながら、出勤途中のOLがこちらを訝しげな目で見ている。犬を散歩させているおじさんが、しきりにこっちに向かってこようとしている犬を引っ張って軌道修正をしようとしている。向こうの通りをデコボコした道を走りにくそうに車が数台かけていく。どこかで猫の鳴き声がする。空は鳥が飛んでいる。

私の笑いは止まらない。

なんだ、世界は何事もないかのように通常運行しているぞ。逆におかしいのは、自分の方ではないか。みんなが怪訝な顔で私を見ている。もしくは近づかないよう避けて通っている。完全に私が変わりものではないですか。なにをそんなに変なものを見る目で見ているの?何がおかしいの?そりゃそうだ、道の真ん中でいきなり笑い始めた男、こんなヤツをおかしいと思うのは当たり前だ。

「お兄さん、大丈夫かー?」「かー?」作業員二人が不安げな顔で話しかけてくる。おまえら、「なー?」だけじゃなくて「かー?」でも共鳴するんだな、と思ってさらに笑ってしまい、私は体をよじらせて地面を転がる。笑いすぎて体じゅうから変な汗が出始めた。でもまだ笑いは止まらない。うおおおおお、く、苦しいぞ。体がけいれんし始める。息が詰まる。

「ffffffっ!」

私は妙な息を吐き、そこでリモコンで電源が切られた様に目の前が真っ黒になった。

(つづく)

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「危ないだろーう!」収集車から降りながら作業服を着た男が叫ぶ。「走ってる車の前に飛び出すなー!」

助手席からもうひとりの作業員が降りてきて、二人は車の裏に回った。すると、どこからかスコップを取り出し、地面を掘るようにリモコンをかき集めては収集口に詰め込んでいく。

私はそろそろと抜けた腰を起こして立ち上がり、その作業をみつめていた。大量に広がったリモコンの量に対して、男ふたり、しかもスコップ。あまりにも効率が悪すぎる。

「今日は特に多いなー」「なー」と、二人は悠長に話しながらリモコンの大地を掘り続ける。しかも一回に集める量は10個程度で、それもいくつかこぼしながらやっているので、とてもはかどっているとは言えない。しかし、二人は5分ほど作業をすると、「ふう」と一息ついて満足げに額の汗をぬぐった。

「コーヒーでも飲むべなー」「なー」二人はスコップを放り出し、そばにあった自販機へ向かう。何がおかしいのか、ヒヒヒヒと笑いながら互いの肩を小突きあい、楽しげに財布の中をのぞいている。

私は二人に近づいた。二人は「どれにしようかな」などと言って笑いあっていたのを、後ろからの私の気配でさっと真顔に戻り振り返った。

「なんべなー!」「なー!」片方のやや訛りのある言葉に続いて、もう片方が「なー!」と相づちを打つのが特徴的だ。もしかすると兄弟なのかもしれない、どことなく顔も似ている。

「あの、ちょっとお二人にお聞きしたいんですが・・・」私は切り出した。

(つづく)

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「物語の展開、なんかよく分からん方向に行きよるなー」

「そうっすねー、僕もよく分かんないっす、特に考えてないんで」

「いったいリモコンがどうなっていくんだ?」

「いやぁ・・・僕にもあんまり分かんないっす」

「映画の×××みたいになってきたな」

「ああ・・・そうなんすかね」

「んで、クリオコートはいつ出てくるんだ?」

「・・・・マネージャー、今、出てます」

「え、出てるって?何が?」

「あの、僕とマネージャー、小説の作中人物として出ちゃってます」

「今?!」

「今です」

「あー出ちゃってんのー、本当にー?そんなパラレルみたいな話になってんの?」

「んー、僕も作者の意図してる所はよく分からないんですが」

「作者って、君作者じゃない」

「いや、そうなんですけど、あくまで僕は作中人物としての僕なんで、僕は僕であって僕でないというか、小説の中の現実の中の架空の僕というか」

「なんかややこしいね。そんなややこしい世界描き切れるほどの力あるの?」

「多分ないかと」

「あーあ、自分でややこしくしちゃって後で収拾つかなくなっても知らないよ」

「んんんん、後はなんとか僕が、いや僕というか現実世界の僕の力を信じるのみです。どうやらこの第○.5回というの今後ちょくちょく出していく予定みたいなんで、どうかこの作品のなりゆきを温かい目で見守ってくれればと思います」

(つづく)

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「なんですかって、何が?」管理人のおばさんは真顔で聞き返してくる。

「何がって・・・・このリモコンは・・・・おかしくないですか?」

「リモコン?」

「はい、リモコン」と言って私は足元を指差した。その指先を追っておばさんが地面を見る。地面と言っても、どこまでも続くリモコンの大地しか見えないのだが。

「はあ」と気の抜けた返事のおばさん。

しばらく間の悪い沈黙が続く。

「別にいつも通りですけどね」そう言うおばさんの顔には、こちらを明らかに不審人物と思っている表情が見て取れる。実際、おばさんは少し後ずさった。

「はぁ・・・そうですか・・・・」

気味の悪いものを見る視線に耐えきれず、話を早々に切り上げ、私は道路の方へ出ていく。おばさんがこちらをちらちらと窺いながら、また掃除を再開する。

おかしいのは周りなのか自分なのか。訳が分からず私は頭を抱える。必死に昨日のことを思い出そうとする。駅前の居酒屋だった。友人3人と飲んだんだった。その中にはタカシもいた。そういえばさっき電話をかけてきた時、なんだか変だったな。同じ事を繰り返してしゃべっていた。自分もだ。あの時の感覚は自分が自分でないような、何かに操作されているような感じだった。操作、操作。口の中でつぶやいてみる。操作と言えば・・・・・リモコン?

突然バリバリと割れるような音が鳴り響き、びくっとして顔を上げた。見ると大きなゴミ収集車がリモコンを潰しながら直進してきた。

おおおおおおおおおおおおおおお。

後ろへ下がろうとして足をもつらせ、その場に尻もちをついた。

そんな私の目と鼻の先で収集車が止まった。

(つづく)

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ドアを押し開けるとリモコンの波が起きてザラザラと不気味な音がする。

「・・・・・」

絶句。

廊下も全てがリモコンで埋め尽くされ、角にあるエレベーターのドアも半分は埋もれて見えなくなっている。手すり越しに見える外も地面が覆われ、白・黒・灰色の奇妙なグラデーションが出来上がっている。

タダゴトデハナイ。

いびつな青竹踏みの上を歩いているような感覚で、ふらふらと廊下を歩いてエレベーターに向かう。下降ボタンを押してドアが開けば、中のリモコンと廊下のリモコンが混ざり合い、さらに層を厚くする。

1階の駐車場に出ると、車もタイヤまで埋まっていた。その向こうの駐輪場も同じく、リモコンの大地から自転車が生えているような有り様だ。

そんな中を、管理人のおばさんがホウキで掃除している。床を掃こうにもデコボコのリモコンの上を掃いているので、あまりはかどっていないようだ。ぼおっとその光景を見ていると、おばさんがこちらに気づいて顔を向ける。

「おはようございます」

「ああ・・・おはよう、ございます・・・」

こんな異常な状況下で日常的なあいさつ。おばさんは黙々と掃除を再開する。もしかして、おかしくなったのは周りではなく自分なのだろうか?そんな疑問が頭によぎる。そういえば、廊下のリモコン群を見たあたりから、なんだか淡々とここまで降りてきた。もともとリモコンは空から降ってくるものだったのかもしれない。「雨で床が濡れて転びやすいのでご注意ください」と同じように「リモコンで歩きにくいのでご注意ください」という注意書きも見た事があるような気がしてきた。そういえばさっきの天気予報の中でも「今日の降リモコン確率は80%」と言ってなかっただろうか。うんうん、昨日も飲み仲間と「最近リモコン降るの多くて困るよな~」と話した記憶が

あるわけない。

頭を振り、いつのまにか現状に飲み込まれそうになっていた自分を振り払う。

とにかく今身近にいるのは管理人のおばさんだ。この人に聞いてみよう。

「あの・・・」

おばさんがホウキを掃く手を止めて振り返る。

「はい?」

「えっと・・・・」なんと聞いたものか、頭の中で整理しようとするが、どうにも考えがまとまらない。なにか言葉を発しようとしてはやめ、声を出そうとしては口を閉じるのを何回か繰り返す。おばさんが怪訝な顔でこちらを見ている。

やっとのことで出た言葉は「これは・・・なんですか?」だった。

(つづく)

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