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ホテルマンとして働く私たちの頭の中を、ちょっとだけお見せしちゃいます。
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「どうしたんだ」タカシは私の目の前にどかっと座る。「何か用か?」

「今朝、電話しただろ」

「電話?ああ、そういえばしたな」

「お前、ずっと話を繰り返してただろ」

「繰り返す?どういう意味だ?」

「話をずっと繰り返して先に全然進まなかったじゃないか」

「そうだったかな?あまりよく覚えてないが」

「まあいい。それにしてもいつからこんなにリモコンだらけになったんだ?」

「リモコン?」

「ああ、いたるところにリモコンリモコン、昨日までこんなことなかったぞ」

「いったいなんのことだ?リモコンがどうしたって?」

「だから床がリモコンだらけで・・・」

私はそう言って床を指差そうと下を向いた所で固まってしまった。綺麗に磨かれたリノリウムの床が見えるだけで、そこにはリモコンの「リ」の字さえ見当たらない。
それを見たとたん、私の中にめらめらと怒りが燃え上がってきた。くそぉ、作者め、都合が悪くなってきたからリモコンを消しやがったな。

床をにらみつけながら歯ぎしりをしている私を憐れむような声でタカシは言った。
「床がリモコンでいっぱいだって?何を言ってるんださっきから。まだ酔っぱらってるんじゃないのか?」
そうして彼は「ははは」と声に出して笑った。

「笑うな!」私は激昂して立ちあがった。「お前だろ、作者とグルになって俺を混乱させているのは!あの変なリモコンが入っていた段ボール箱にあった「栗田へ」って字はお前の字だ!そうだろ!答えろっ!」

「なーにーを言ってるんだよ、俺にはさっぱり意味がわからんよ。頭おかしくなったんか?」
タカシはニタニタ笑いながら下から覗き込むように見上げてきた。明らかに馬鹿にしている顔だ。

完全に頭に来た。タカシの胸倉をつかみ、引きずり下ろした。彼の顔へ唾を吐きかけながらまくし立てた。「お前だろ!全部お前が仕組んだんだろ!俺をぐっちゃぐちゃにかき乱してそれ見て笑ってたんだろ!どうなんだよぉっ!答えんかい!」

いきなり起こった大声に驚いて周りの客たちは一斉に注目しているのを感じた。ふとすぐ横へパタパタと駆けてきて立ち止った足音があった。私は顔を真っ赤にしながら「あ゛ん?!」と荒い息を吐いてそちらを見た。

喫茶店の制服に身を包んだ色黒兄弟が、にっこりと笑いかけていた。

(つづく)

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自分の部屋の前へと戻ってきた。

ああ、なんだったんだ今のは?とても恐ろしい光景だった。

荒涼とした砂漠が延々と続く景色。周りを見る限り、そう時間は経っていないようだが、あの砂漠に何時間もいたような感じがする。暗いし寒いし、出口を求めて必死に駆け回っていた。

握りしめているリモコン。ボタン「1」の上に親指を乗っけたまま固まったように手が貼り付いている。

これはチャンネルを変えたということになるのだろうか?今見えているこの世界がチャンネル1で、あの恐ろしくスローモーで寂しい砂漠がチャンネル5ということか。ならば、リモコンには0から9まであるから、またそれぞれに違った世界が展開しているということだろうか。

私はなんだか背筋がゾクゾクしていきた。恐怖心と興奮からだった。違った世界に放り込まれることへの恐怖と、どこかでその恐怖を体験してみたいとはやる気持ちからくる興奮だ。いったい、他のチャンネルにはどんな世界が広がっているのだろう。

しばらくリモコンを見つめていたが、いいや、もう何も押すまいと腕を下ろした。そのままぽいと床へ放り投げた。

とかくこの物語には謎が多すぎる。謎にはなんらかの解決が見えないと納得もいかないのに、作者はそこを全く考えずに書いているものだから、次々と謎を出して少しでも後回しにしようと時間稼ぎをしている。このままではいかん。なんらかの、もうこうなったらこじつけでもいいから解決を与えないと、このままグダグダ続くことになる。作者がこれからどう進めていくつもりか知らないが、私は私で動いてやる。

意気込んだ私は、部屋へ上がり、リモコンの上に転がっている携帯を拾い上げた。電話をかける。何やら変な音がしてつながらない。作者め、私の暴走を止めようと電話がつながらないような設定にしやがったな。そうはさせんぞ。一回切ってもう一度かけ直す。風船がしぼむような音とともに、またしても電話は不通になる。私は次第にイライラしてきて、力の限り叫んだ。

「余計な邪魔すんなっ!!」

小心者の作者のことだ、今の一発で怯えているに違いない。もう一度電話をかけると、今度はあっさりつながった。口の端で笑う。

「もしもし」「おう、タカシか」「なんだどうした」「いや、これから会えないか」「これから?ああ、別にいいが」「いろいろ聞きたいことがあってな」「聞きたいこと?」「ああ、会ってから話す」そして私は駅前の喫茶店の名前を出し、そこで20分後に落ち合うことになった。

私は階下へ下り、デコボコの道を車体をグラグラ揺らしながら走るタクシーに乗って駅前にたどりついた。待ち合わせの喫茶店はいつもどおり空いてるでもなく混んでいる訳でもない、普段どおりのままだった。ただひとつ、そこらじゅうがリモコンで埋め尽くされている以外は。

入ろうとドアに向かう途中で、作者の妨害か、横から大勢の自転車が走ってきて道を阻んだが、それをなんなくすり抜け、中へと入った。店内を見渡した限りでは、まだタカシは来ていないようである。

適当な席に座り、頼んだコーヒーを店員が持ってきた頃に、入口にタカシの姿が見えた。

(つづく)

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流れる

ケシキ

消えた

現れる

何が?

砂漠だ

困惑の

ワタシ

くらい

さむい

いやな

感触だ

アルク

砂の上

ハシル

砂の上

果ての

見えぬ

地の上

さ迷う

意味が

不明だ

何にも

無いぞ

無限の

大地だ

息詰る

出たい

外へと

変える

CHを

手にし

ている

リモコ

ンのボ

タンを

押す。

(つづく)

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私は作者に対してぶつぶつと愚痴を言いながら自分の部屋へと戻った。

ザクザクとリモコンを踏みしめながら、いつの間にかその存在にあまり違和感を覚えなくなっている自分に気づく。

リモコンを掻くようにしてドアを開けると、色黒兄弟が蹴り込んでいったシルバーのリモコンが目についた。床一面、同じような色ばかりなのに、なぜかそれだけは周囲から浮いて見えたのだ。

他のものとは何か違うのだろうかとそれを拾い上げる。ぶ厚くて結構ずっしりと重い。チャンネルボタンと再生・巻き戻し・早送りなどのボタンなどがあり、テレビとDVDプレーヤーのリモコンを一緒にしたようなタイプだった。しかし、市販されているものと比べて特別何か変わっているわけでもない。

しばらく引っくり返したりしてまじまじと見ていたが、何か変わった機能もついていなさそうなので、ボタンを押してみる事にした。

チャンネル「5」をポチっとな。

次の瞬間!!!!

・・・・・・・何も起こらない。

他のボタンも押してみたが、テレビがついたり、エアコンのスイッチが入ったり、どこかでロボットが起動するような音もしない。

なんだ、つまらん、と心の中で何か起こる事を期待していたのを裏切られ気抜けして、投げ捨てようと思ったが、ふと思いつき、裏の電池パックのフタを開けてみた。

案の定、電池が入っていなかった。

まだ何か起こる可能性が残っていた事に内心わくわくしながら、床の上から適当にリモコンを拾って電池パックを開けてみるが入っていない。その次も、その次も、そのまた次もだ。

家のどこかに電池の買い置きがなかったか思い出そうとしたが、最近電池を買った覚えはなかった。

再び落胆しかけたが、もしやこのリモコンが入っていた箱に付属しているのでは、と思いついた。

また外に戻り、マジックで「栗田へ」と書かれたボコボコの段ボール箱を拾い上げ中を覗くが何もない。箱を逆さにして振ってみたが何も落ちて来ない。手の中で回すように箱を四方から見てみたが、何も変わったところはない。ただ「栗田へ」という大きな文字が目につくだけだ。それにしても、この字どこかで見た事があるような・・・・。

そう思った時、目の端にきらりと何かが映った。廊下の少し先、隣と隣の隣の部屋の間ぐらいのところに、小さな四角いものがある。あれはもしや電池ではないか?

箱を捨てて飛びつくように向かうとやはり電池だった。やはり電池は箱の中に入っていたんだ。色黒兄弟との段ボール箱ドッジボールで飛び出てしまったのだろう。

外側を覆っていたフィルムをはぎとり、早速電池をリモコンにセットした。

チャンネル「5」をまた押してみる。

次の瞬間!!!!!

周りの景色が高速で吹き飛ぶように流れ、白と黒の走査線が私を覆った。

「AGHHHHHHHHHHHHHHH!!!!」

(つづく)

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「主人公が嘆きだしたよ」

「うぬぬぬ・・・・どういうつもりなんでしょう」

「どういうつもりって、書いているのは君だろう」

「いや、マネージャー、前にも言いましたが僕はあくまでも作中人物であって、虚構の中の人間なんです」

「ああ、もうそのややこしい話はもういいよ」

「もう作者自体も自分で作った設定に手一杯になってきてるんじゃないでしょうか」

「自分で自分を苦しめちゃってるの?だから言ったじゃない。そんな世界を描き切れるほどの技量あるのかって」

「これから作者が自分の力不足をちょくちょく登場人物たちにつぶやかせるような事態にならなければいいんですが・・・・」

「ほんとだよ。途中で放り出されたりしたら困るよ。書き始めちゃったからには最後までやってもらわなきゃ」

「はあ」

「はあって、君から、その現実の作者に言っとけよ」

「分かりました」

チーン。

「あっ、お客様です。いらっしゃいませー」

(つづく)

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