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ホテルマンとして働く私たちの頭の中を、ちょっとだけお見せしちゃいます。
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リモコンを中心として動きを止める私と二人。

しばしの沈黙。







「えいっ」静寂を破り、色黒兄弟の一人がこちらに向かってリモコンを蹴飛ばした。リモコンはきれいな弧を描いて私の部屋にゴールイン。

「あっ」私が声を上げたと同時に、二人は一目散に逃げ出した。私は部屋とふたりの後ろ姿を交互に見て、ワンテンポ遅れて追いかけた。「待てこらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

二人はすでにエレベーター前に達していたが(リモコンの上という走りにくい状況にも関わらず驚異のスピードだ!)、上の方に上がってしまっていて間に合わないと見切りを付けたのか、少し先の非常階段へとダッシュした。リモコンをざくざくと蹴散らしながら負けじと追いかける。非常階段の入り口にたどり着いた時に二人はもう階下へ見えなくなっていた。舌打ちしながら、階段を下るというよりもリモコンの上を滑る様に下に向かう。少し先で同じく下って行く音が聞こえている。徐々にではあるがその音が近くなってきた。
上から下へと滝のようにリモコンが流れていく。その流れに乗って階段を下りてゆく。もうすぐ二階から一階へと移る踊り場付近で、先から「がちゃん」と扉を開ける音がした。非常階段から外へ出る扉だ。逃がしてなるものか、と猛突進する。開かれた扉が見え、飛び上がる様に外に出た。

二人は駐車場から今にも道路へ出るところだった。飛び跳ねる要領で私は追う。色黒兄弟のひとりが振り返り、私の姿を確認すると小さく「ひぃっ」と悲鳴を上げ速度を上げた。よほど鬼のような形相をしていたに違いない。私の中には二人を絶対に捕らえるという使命にも似た感情が湧き上がっていた。もうひとりも振り返り、同じく「ひぃっ」と声を出し、驚きのあまりつまずいてその場へ転んだ。先を行っていた一人が「あっ」と立ち止まりかけたが、獲物を狙う獣のような私を見て、そいつを見捨てて逃げた。こけた一人も必死に立ち上がろうとしたが足がもつれ、二度三度と同じ場所で転んだ。

その上に飛びつくように襲いかかった。

荒い息を吐きながら耳元でささやいた「捕まえたずぉぉぉ・・・・」

(つづく)

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