ホテルマンとして働く私たちの頭の中を、ちょっとだけお見せしちゃいます。
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「誰・・・ですか?」
突然の登場に、恐る恐る私はたずねた。
「いや、まあ、なんというか、あなたたちを作りだした生みの親、ってところですかね」
メガネをかけた方のスーツの男が、メガネの位置を直しながら言う。
「ええっ、じゃあ、あんたが作者なのか!?」
私は席から思わず立ち上がって叫んだ。
「お前か!こんなぐちゃぐちゃな世界を作ったのは!」
私はメガネに飛びかかった。驚いてメガネがのけぞる。
「ち、違う!違うんだ!」
「何が違うんだ!途中で物語丸投げしやがって!話が全然まとまってないだろうが!」
「いやっ、だからっ、俺も作中人物なんだよ!」
「何を今さらっ!」
私がさらに激しく揺さぶると、彼はくるくると目を回し始めた。
隣のスーツの男が「まあまあ」と言って私の肩をたたいて止めた。
私が手を離したとき、メガネは失神して床にどさっと倒れた。
息を切らしている私の服の乱れを直しながら、スーツの男は言った。
「まあまあ、俺たちの事を話すから座ってくれ」
「あんた誰なんだよ」
「話すから、まあ座って」
促されて私は席に着いた。相変わらずメガネは床の上に伸びたままだ。気付けば、タカシと色黒兄弟が姿を消している。スーツの男は私の向かいに腰掛け、テーブルの上のコーヒーをすすめてきた。自分も飲みながら、彼は話し出した。
「この物語の作者はホテルマン、で俺はそのホテルのマネージャーだ。この話には何度か「○.5回」という回が存在して、俺たちはそこへ登場していた。確かに俺たちは実在する人物なんだけど、あくまでもそれをモデルとした作中人物なんだ。だから正直なところ君と立場は変わらない。今までサブストーリーの登場人物だったんだが、こうして本編の方に出てきてしまった。ここまでは分かるかな?」
「んんん・・・・」私はうなった。
「まあ、理解するのは難しいかもしれない。実際、俺自身もよく分からないんだ。なんだかパラレルストーリーみたいな構成に持って行きたかったみたいなんだが、それがうまく行かなくて、俺たちも作者に捨てられちゃったのよ。で、行き場がなくて、こっちに出て来たってわけ」
「ああ・・・じゃあ・・・状況は俺たちと一緒ってことですね」
「その通り。俺たちもこの中で迷子になってんだ」
マネージャーと言う男は、肩をすくめておどけてみせた。そして、大仰にカップを持ちコーヒーをすする。
「・・・ずいぶんとのんきなもんですね」
「うん、もうなるようにしかならないもん」彼は子供のように言った。それから懐からタバコを出し、火をつけた。後ろから店員がぱたぱたと足音を立てて走ってくる。
「お客様、こちら禁煙なんですけど」
「いいじゃない、どうせ虚構の中なんだし」
「キョコウ?」店員がきょとんとした顔をして彼を見ている。
「まあなでもいいの、とにかく禁煙とかそんなことここでは関係ないの。ある意味自由、フリーダムよ」マネージャーはそう言って手を大きく広げて見せた。「フリーダム!」
店員は「はあ・・・」といぶかしげな眼で見ながら去って行った。
「それで、これからどうしましょう?」私は体を前にかがめ聞いた。
「どうしようかねぇ・・・」煙の輪をぷかぷかと吐きながら、のんびり彼はつぶやいた。
「うう・・・・ん」後ろで伸びていたメガネが声を上げた。
(つづく)
突然の登場に、恐る恐る私はたずねた。
「いや、まあ、なんというか、あなたたちを作りだした生みの親、ってところですかね」
メガネをかけた方のスーツの男が、メガネの位置を直しながら言う。
「ええっ、じゃあ、あんたが作者なのか!?」
私は席から思わず立ち上がって叫んだ。
「お前か!こんなぐちゃぐちゃな世界を作ったのは!」
私はメガネに飛びかかった。驚いてメガネがのけぞる。
「ち、違う!違うんだ!」
「何が違うんだ!途中で物語丸投げしやがって!話が全然まとまってないだろうが!」
「いやっ、だからっ、俺も作中人物なんだよ!」
「何を今さらっ!」
私がさらに激しく揺さぶると、彼はくるくると目を回し始めた。
隣のスーツの男が「まあまあ」と言って私の肩をたたいて止めた。
私が手を離したとき、メガネは失神して床にどさっと倒れた。
息を切らしている私の服の乱れを直しながら、スーツの男は言った。
「まあまあ、俺たちの事を話すから座ってくれ」
「あんた誰なんだよ」
「話すから、まあ座って」
促されて私は席に着いた。相変わらずメガネは床の上に伸びたままだ。気付けば、タカシと色黒兄弟が姿を消している。スーツの男は私の向かいに腰掛け、テーブルの上のコーヒーをすすめてきた。自分も飲みながら、彼は話し出した。
「この物語の作者はホテルマン、で俺はそのホテルのマネージャーだ。この話には何度か「○.5回」という回が存在して、俺たちはそこへ登場していた。確かに俺たちは実在する人物なんだけど、あくまでもそれをモデルとした作中人物なんだ。だから正直なところ君と立場は変わらない。今までサブストーリーの登場人物だったんだが、こうして本編の方に出てきてしまった。ここまでは分かるかな?」
「んんん・・・・」私はうなった。
「まあ、理解するのは難しいかもしれない。実際、俺自身もよく分からないんだ。なんだかパラレルストーリーみたいな構成に持って行きたかったみたいなんだが、それがうまく行かなくて、俺たちも作者に捨てられちゃったのよ。で、行き場がなくて、こっちに出て来たってわけ」
「ああ・・・じゃあ・・・状況は俺たちと一緒ってことですね」
「その通り。俺たちもこの中で迷子になってんだ」
マネージャーと言う男は、肩をすくめておどけてみせた。そして、大仰にカップを持ちコーヒーをすする。
「・・・ずいぶんとのんきなもんですね」
「うん、もうなるようにしかならないもん」彼は子供のように言った。それから懐からタバコを出し、火をつけた。後ろから店員がぱたぱたと足音を立てて走ってくる。
「お客様、こちら禁煙なんですけど」
「いいじゃない、どうせ虚構の中なんだし」
「キョコウ?」店員がきょとんとした顔をして彼を見ている。
「まあなでもいいの、とにかく禁煙とかそんなことここでは関係ないの。ある意味自由、フリーダムよ」マネージャーはそう言って手を大きく広げて見せた。「フリーダム!」
店員は「はあ・・・」といぶかしげな眼で見ながら去って行った。
「それで、これからどうしましょう?」私は体を前にかがめ聞いた。
「どうしようかねぇ・・・」煙の輪をぷかぷかと吐きながら、のんびり彼はつぶやいた。
「うう・・・・ん」後ろで伸びていたメガネが声を上げた。
(つづく)
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