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ホテルマンとして働く私たちの頭の中を、ちょっとだけお見せしちゃいます。
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テーブルにはコーヒーが4つ並んでいる。1つは私に、1つはタカシに、そしてあとの2つは色黒兄弟のものだ。3人がまるで面接官のように私を見ている。笑っているような困っているような、あいまいな表情で私をみつめている。私は息苦しさを覚え、ごほんと大きく咳払いをした。

「大丈夫ですかー?」「かー?」

色黒兄弟がのんきな声で尋ねる。

「いや・・・・とりあえず状況がさっぱり分からん」

私は率直な感想を述べた。

「状況ねぇ・・・正直俺たちにもそれは分からないんだよ」

タカシがうつむき加減で答えて、コーヒーをすすった。一呼吸おいてしゃべり出す。

「とにかく俺たちはお前の事を混乱させる役割だった。リモコンがどっさり転がっている世界にお前を放り込んで、お前を困らせる。しかし困らせてその後どうしていくのか、芳香性がさっぱり分からない。それはお前も考えただろうが、要は混乱を与えるだけ与えておいて、それの解決の糸口を作者が何にも考えていなかったからだろうな。だから今いちばん混乱しているのは作者なんだと思う。混乱しているからこそ、さっき「方向性」と書きたかったところを「芳香性」と誤変換しているんだ」

色黒兄弟が「うんうん」とうなずいている。

「そして今やそのリモコンさえここには存在していない。都合が悪くなって、というより面倒臭くなって、作者がかき消してしまったんだろう。そうして、俺たちだけが残ってしまった。もうここからは、俺たちで話を進めていくしかない」

「確かにそれは俺も考えていた。変てこな世界を書こうとして変にし過ぎて収拾がつかなくなっている状況は、俺たちにとっても見てられない。だからこじつけでも、なんとか着地点を見つけようとお前を呼びだしたんだ。全部お前が仕組んだ事ということにして、物語に決着をつけようと思ったんだ。ところがリモコンは消えてしまうし、おまけにあんたら兄弟も出てくるし。ていうかなんでここの制服着てんの」

「いやー、気付いたら着てたんだべなー」「なー」

「ある意味」タカシが真剣な目つきで言う。「俺たちは作者に捨てられたんだ。この物語を丸投げされちゃってる状態だよ。無責任なもんだよな」

「じゃあ、下手したらこのまんま何も起こらずに終わる可能性も?」

「それもありうるね」後ろから別の声がした。

驚いて振り返ると、スーツの男が2人立っていた。

(つづく)

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